腸管出血性大腸菌とは?
大腸菌と腸管出血性大腸菌の違い
大腸菌は、私たちの腸内に もともと存在する常在菌 であり、ほとんどは無害です。
しかし、その中には 食中毒や感染症を引き起こす病原性の大腸菌 も存在します。
そのうち ベロ毒素(Vero toxin, VT) を産生し、腸の粘膜を傷つける大腸菌を 腸管出血性大腸菌(Enterohemorrhagic Escherichia coli, EHEC) と呼びます。
腸管出血性大腸菌は50種類以上!
腸管出血性大腸菌には O157だけでなく、O26・O111・O128など50種類以上の血清型 が確認されています。
すべての腸管出血性大腸菌は、ベロ毒素を産生し、食中毒や腎障害などの合併症を引き起こす可能性があります。
特に、O157・O26・O111は発症報告が多く、重症化しやすい血清型 です。
代表的な腸管出血性大腸菌の種類と特徴
菌の種類 | 特徴 | 発症リスク |
O157(オーイチゴーナナ) | 最も有名で重症化しやすい | 高 |
O26(オーニーロク) | 保育園・学校などでの集団感染が報告 | 中~高 |
O111(オーイチイチイチ) | 感染力が強く、重症化しやすい | 中~高 |
O128(オーイチニハチ) | 食品を介して感染が報告 | 中 |
O121(オーイチニイチ) | 生肉や水を介して感染の可能性あり | 中 |
これらの菌は、少量(100個未満)でも感染を引き起こし、重篤な症状を発症することがあります。
特に、子どもや高齢者は重症化リスクが高いため、注意が必要 です。
腸管出血性大腸菌に感染するとどうなる?

主な症状と病状の進行
腸管出血性大腸菌に感染すると、 2~9日(平均3~5日)の潜伏期間 を経て症状が現れます。
症状の段階 | 主な症状 | 特徴 |
初期症状 | 軽い下痢・腹痛 | 感染初期は風邪や軽い食あたりと間違えやすい |
進行 | 激しい腹痛・水のような下痢 | 3日目あたりから強い腹痛を伴うことが多い |
重症化 | 血便・発熱・嘔吐 | ベロ毒素により腸粘膜が損傷し、血便が出る |
合併症 | 溶血性尿毒症症候群(HUS) | 腎臓の機能低下・脳症を引き起こすことも |
特に 小児や高齢者は重症化しやすく、最悪の場合は命に関わる ため、早めの対処が重要です。
腸管出血性大腸菌の感染経路とは?

腸管出血性大腸菌は 「経口感染」 する病原菌であり、菌が口から体内に入ることで発症 します。
感染しやすい食品・状況
- 生肉(特に牛肉・レバー・ユッケ)や加熱不足の肉料理
- 汚染された井戸水や食品(サラダ・ナチュラルチーズなど)
- 感染者が調理した食品(おにぎり・弁当など)
- 家庭や保育施設でのタオル・トイレの共用による二次感染
特に、食品を介した感染だけでなく、人から人への接触感染や二次感染が多い ため、感染者が出た場合は迅速な対応が必要です。
腸管出血性大腸菌の予防方法

食中毒予防の3原則
- 菌をつけない(手洗い・消毒)
- 菌を増やさない(食品の低温保存)
- 菌を殺す(十分な加熱調理)
具体的な予防策
- 肉は75℃以上で1分以上しっかり加熱
- まな板・包丁は肉用と野菜用で分ける
- こまめな手洗い&消毒(トイレ・おむつ交換後は特に注意)
- 調理時は「生肉用トング・箸」と「食事用の箸」を分ける
- 感染者が出たら、トイレ・お風呂の消毒を徹底
腸管出血性大腸菌は「少量でも危険!」しっかり予防を

- 腸管出血性大腸菌(EHEC)はO157だけでなく、O26・O111など50種類以上が確認されている
- すべてのEHECはベロ毒素を産生し、食中毒や重篤な合併症を引き起こす可能性がある
- 感染経路は「生肉・汚染食品・人から人への二次感染」などがあるため、食中毒予防が重要
- 特に保育園や福祉施設では、免疫が弱い子どもや高齢者が感染しやすく、より徹底した衛生管理が必要
腸管出血性大腸菌は O157だけではなく、さまざまな種類があることを知り、適切な予防策を取ることが大切です。
特に 集団生活の場では、食材の加熱・手洗い・消毒を徹底し、二次感染を防ぐことが重要 です!