食品の安全性は、私たちが安心して暮らすうえで欠かせない要素です。
日常的に口にする食材や加工食品が、もし有害な菌やウイルス、化学物質に汚染されていたとしたら、食中毒や深刻な健康被害を引き起こす可能性があります。
そこで欠かせないのが「食品検査」の存在。食品検査とは何か、どのような方法や項目があるのか、そして最近のトピックまで、わかりやすく解説します。
食品検査とは?

食品検査の定義
食品検査とは、食品に含まれる細菌・ウイルス・化学物質・放射性物質・アレルゲンなどの有害物質が基準値を超えていないか、また表示に問題がないかを確認するための検査を総称したものです。
食中毒の予防や、栄養成分・賞味期限などの正確な表示を担保するために行われます。
- 微生物検査:食中毒菌(サルモネラ菌や大腸菌など)やウイルス(ノロウイルスなど)の有無や量を調べる
- 理化学検査:化学物質や残留農薬、添加物などが基準値以内かを確認
- 寄生虫検査:アニサキスなど寄生虫の存在をチェック
食品衛生法などの法律や国際基準(HACCPなど)に基づき、メーカーや飲食店は自主的に、あるいは行政の指導のもとでこれらの検査を行っています。
食品検査はなぜ重要なのか
食品検査を実施することで、潜在的な汚染リスクを事前に把握し、問題があれば早期に改善措置を取れます。
これにより、食中毒や大規模リコールなどのリスクを最小限に抑え、消費者に安心・安全な食品を届けることが可能になります。
また、企業や店舗にとっては、ブランドイメージの向上や社会的信用の確保にもつながるのです。
食品検査の主な項目と方法

微生物検査
食品中の微生物(細菌やウイルス)の有無や量を検査する項目です。以下の表は、代表的な微生物検査の例です。
微生物 | 主な特徴 | 検査方法・ポイント |
一般生菌数 | 食品全体にどれだけ菌が存在するかの総量を把握 | 培地に塗布し、細菌コロニー数を測定 |
大腸菌群 | 衛生指標菌として利用され、水や食品が糞便由来で汚染されているかの目安となる | 培養後にコロニー特性を確認 |
サルモネラ菌 | 食中毒の代表的な原因菌。鶏卵や肉類での汚染が多い | 培養、選択培地による分離、生化学的試験、血清型判定や遺伝子検査を組み合わせて確認 |
腸管出血性大腸菌(O157) | 強力な毒素を持ち、少量でも集団発生を起こす恐れ | 特殊培地で培養し、毒素遺伝子の有無などをPCRで確認 |
ノロウイルス | 冬場に流行し、嘔吐や下痢を引き起こすウイルス | PCR法などを用い、ウイルス遺伝子を増幅して検出 |
理化学検査
食品中の農薬残留や金属汚染、食品添加物の濃度などを調べる検査です。ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーなどの機器を使って、微量成分まで測定します。
化学的な安全性だけでなく、栄養成分表示(タンパク質やビタミン、ミネラルなど)の確認にも活用されます。
寄生虫検査
アニサキスやサイクロスポラ、トキソプラズマなどの寄生虫が食品に含まれていないかを調べる検査です。
特に生魚や生野菜を扱う飲食店や食品メーカーでは欠かせない項目となっています。
食品検査を行うメリット

1. 事故・クレームの未然防止
食中毒や金属片混入などの重大な事故を防げるだけでなく、小さなクレーム(味の異常やにおい)にも早期に対処できます。
結果的に企業の損失や社会的信用の毀損を回避することが可能になります。
2. 信頼性とブランドイメージの向上
検査を実施し、検査結果を情報公開することで、消費者は「このメーカーや店はしっかり安全管理をしている」と評価してくれます。
結果的にブランド力の向上につながり、競合他社との差別化要素ともなります。
3. 海外輸出や取引における要件クリア
国際基準(ISOなど)や各国の輸入規格では食品検査の結果が必須となる場合があります。
特に海外輸出を目指す企業にとっては、検査で得たデータがビジネスチャンスを広げる鍵となることも少なくありません。
食品検査の進め方と注意点

検査のタイミング
- 原材料の受け入れ時:入荷した段階で品質・衛生状態をチェック
- 製造工程中:HACCP(ハサップ)の概念に基づき、重要管理点(CCP)でサンプルを採取
- 出荷・保管時:最終製品の安全性を確認し、トレーサビリティを確保
外部検査機関の活用
自社内に検査設備を持たない場合や、より専門的な検査が必要な場合は、外部の検査機関に依頼する方法があります。
費用はかかるものの、最新の設備や専門知識をもった技術者による正確な検査を受けられるメリットがあります。
コミュニケーションと教育
検査結果の活用には、社内教育や情報共有が不可欠です。
検査データをただ集めるだけでなく、分析結果からリスク要因を抽出し、現場での衛生管理手順を見直す機会として活用しましょう。
最新トピック:衛生管理の強化とHACCP義務化

2021年6月から食品衛生法改正に伴い、HACCPに沿った衛生管理が義務化されました。
これに伴い、食品事業者は各工程でリスクを分析し、重要管理点(CCP)を連続的に記録・監視することが求められます。
これらの取り組みの一環として、食品検査の実施頻度や項目を厳格化する動きが広まっているのです。
さらに、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行を受けて、感染症対策としての衛生管理も強化され、検査のあり方や業務フローを見直す企業も増えています。
デジタル技術を活用した遠隔検査や自動化システムの導入など、今後も食品検査に対する要望はますます高まるでしょう。
食品検査は安全と品質を支える重要な仕組み

食品検査は、食の安全と品質を守るために欠かせない仕組みです。
微生物検査や理化学検査、寄生虫検査など多角的な視点から食品をチェックし、消費者が安心して口にできる商品を提供するための重要な役割を担っています。
- 法令や国際規格に基づく必須項目
- 事故やクレームの未然防止
- ブランドイメージの向上
- HACCP義務化との連携
これらのポイントを踏まえ、企業や店舗は食品検査を単なるコストとして捉えるのではなく、「安全と信頼を生む投資」として積極的に取り組むべきでしょう。
消費者にとっては、検査を行っている企業の製品やサービスを選ぶことで、より安全な食生活を送る手がかりになるはずです。
今後も社会の要請や技術の進化に応じて、食品検査の重要性と取り組みはさらに広がっていくでしょう。