新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、改めて「手洗いの重要性」を実感した方も多いのではないでしょうか。
実は、手洗いは感染症対策としてだけでなく、食品衛生の面でも極めて重要な役割を果たします。
飲食店や病院、学校給食など、人が集まる場所では、ちょっとした手指の汚れが大規模な食中毒につながるリスクがあります。
本記事では、手洗いがなぜここまで大切なのか、正しい方法や新しいトピックなどを交えつつ、やさしく丁寧に解説していきます。
手洗いと食品衛生の関係

手洗いがもたらす効果
私たちの手には、目に見えない多くの細菌やウイルスが付着している可能性があります。特に食品を扱う場面では、手指を介して食材に細菌やウイルスが移ってしまうことがあります。
これが原因となり、食中毒の集団発生を引き起こすケースも少なくありません。
- 細菌の例:サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌(O157など)、黄色ブドウ球菌 など
- ウイルスの例:ノロウイルス、ロタウイルス など
適切な手洗いを行うことで、これらの菌やウイルスを除去し、食品を安全に取り扱うことにつながるのです。
法律やガイドラインでの位置づけ
厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」や「食品衛生法」、各自治体の条例などでも、従業員の健康管理とあわせて、手洗いの徹底が求められています。
これは、調理従事者が無症状でも菌やウイルスを保有しているケースがあるためです。
たとえば、ノロウイルスを自覚なしに保菌している場合、手指を介したウイルスの拡散が大きな問題となります。定期的な検便や体調確認に加え、手洗いの励行はあらゆる調理現場で重要視されているのです。
正しい手洗いの手順とは?

基本の手順
手洗いは一見すると簡単そうですが、実際には洗い残しが発生しやすい行為です。以下の手順を踏むことで、より効果的に汚れや菌を洗い流せます。
- 流水で予洗い
手をしっかりと濡らし、目に見える汚れをざっと流します。 - 石けんをつけて泡立てる
ハンドソープなどを手のひらに取り、泡立てながら洗います。 - 指先・爪の間をこする
食材に触れる機会の多い指先や爪の間は、特に念入りに洗いましょう。 - 手の甲や親指の付け根まで
親指の付け根や手の甲は意外と洗い残しが起こりやすい部分です。 - 手首まで忘れずに
長袖であれば袖をまくり、手首も石けんで洗います。 - 流水で十分にすすぐ
泡が残らないよう、しっかりとすすぎましょう。 - 清潔なタオルやペーパータオルで拭く
使い回しのタオルを避け、清潔なペーパータオルや乾燥機で水気を取ります。
洗い残しが多い箇所
以下の表に、手洗い時に洗い残しが起こりやすいポイントと、その対策をまとめました。
洗い残しが多い場所 | 対策 |
指先・爪の間 | 泡立てた状態でしっかりもみ洗いし、爪が長すぎないようにカットしておく |
親指付け根 | 親指を他の手で包み込むようにして回転させながら洗う |
手の甲 | 手の平ばかりでなく、甲や指の関節部分も丁寧にこすり洗い |
手首 | 袖をまくりあげ、石けんをつけたまま手首まで洗浄 |
くぼみやシワ | ハンドクリームや保湿を適度に行い、極端な荒れを防ぐ(傷やシワに菌が残りやすい) |
手洗いのタイミングと頻度

食品を扱う前後
食品衛生の観点から、以下のようなタイミングでの手洗いが推奨されます。
- 調理に取りかかる前
- 生肉や生魚などを触った後
- トイレの使用後
- 外出から帰宅した直後
- 咳やくしゃみを手で受け止めた後
- ゴミ箱の扱いをした後
これらのタイミングを意識することで、手指から食品への二次汚染を大幅に減らせます。
日常生活でも大切
手洗いは、調理現場だけでなく日常生活にも当てはまります。例えば、子育て中の家庭では、乳幼児のオムツを交換した後や、子どもが外遊びから戻った時など、こまめに手洗いをすることで感染症の拡大を防ぐことができます。特に近年は、新型コロナウイルスやインフルエンザなどの流行をきっかけに、手洗いが広く普及しましたが、今後も継続して徹底していくことが望まれます。
手洗いの重要性と最近のトピック

新型コロナウイルス感染症との関連
新型コロナウイルスの世界的流行を経て、手洗いの習慣は大きく見直されました。マスク着用やアルコール消毒と並んで、手洗いが感染予防の基本として定着しています。
その結果、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症の発生率が一時的に低下したという報告もあります。
一方で、衛生習慣の変化に伴い、手肌の乾燥や荒れに悩む人が増えているのも事実です。適度な保湿を行いながら、衛生管理を持続させる工夫が求められています。
HACCPの普及
食品衛生法の改正に伴い、2021年6月から「HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理」がすべての食品事業者に義務化されました。
HACCPとは、食品製造や調理の工程で生じる危害要因を分析し、重要管理ポイントを連続的に監視する方法です。
その基本となるのも、やはり手洗いの徹底です。食品事業者だけでなく、家庭でも HACCP の考え方を取り入れ、手洗いや調理工程のチェックを行うことが推奨されています。
手洗いと食品衛生に関するチェックリスト
以下は、日常の調理や食品の取り扱いにおいて気を付けたいポイントをチェックリスト形式でまとめた表です。ご家庭や職場で参考にしてみてください。
項目 | チェックポイント |
手洗い前の準備 | – 指輪や腕時計を外しておく- 爪の長さを確認し、長い場合は切る |
正しい手洗い方法 | – 石けんをよく泡立て、爪・指先・親指周り・手首までしっかり洗う- 20秒以上、流水で十分にすすぐ |
ハンドケア | – 手肌が荒れないよう定期的に保湿- 手荒れがひどい場合は絆創膏や手袋で保護 |
調理器具の洗浄・消毒 | – まな板・包丁・ふきんなどは使用後すぐ洗浄し、十分に乾燥させる- 塩素系漂白剤などで定期的に消毒 |
食材の加熱条件 | – 肉や魚は中心温度が75℃以上になるよう加熱- 特にノロウイルス対策には85~90℃で90秒以上の加熱が有効 |
賞味期限・保存温度の確認 | – チルド食品は冷蔵庫内で適切に保管- 冷凍・冷蔵の温度チェックを定期的に行う |
体調不良時の対応 | – 嘔吐や下痢、発熱がある場合は調理を避ける- 必要に応じて医療機関を受診 |
食品衛生の基本!手洗いの大切さを再確認しよう

私たちの健康と食の安全を守るために、正しい手洗いは欠かせません。適切に手を洗うことで、細菌やウイルスの食品への付着を防ぎ、食中毒や感染症のリスクを大幅に減らすことができます。
この衛生管理の基本は、飲食店や病院、学校などの大規模な調理現場はもちろん、家庭でも実践すべき重要な習慣です。
新型コロナウイルスの流行を経て、社会全体で衛生意識が向上しましたが、こうした習慣を今後も継続していくことが大切です。
手洗いの徹底に加え、HACCPなどの食品衛生管理システムを取り入れることで、より安全で安心な食環境を実現しましょう。